真冬の怪談
いつもの店へ飲みに行った時のこと。
マスターが言うには、「昨晩は大変だった」らしい。
何でも女のお客さんが、「誰か入って来た」と言って、
「そこに座っている」、と誰もいない椅子を指差したそうだ。
何でも、まだ死んでない生き霊らしい。そう言えば思い当たる節がある。
と、此処までは、生き霊を除けばたまに聞く話だ。
そこへ女のお客さんが来て言った。
「今日の夕方に会ったよ、ママと買い物袋を下げて歩いていた」と言った。
「顔を見たか」
「目は合わせていない」
その人は、今日か明日かで、とても出歩けるような状態ではないはずだ。
その女性は感の鋭い人で、いい加減な人ではない。
その場が静かになったのは言うまでもない。
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