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2007年11月27日 (火)

椿 三十郎

        椿三十郎・・・キャラ説

生まれて初めて試写会なるものに行けた。

「椿三十郎 森田芳光監督」。

二十代の頃に黒澤明監督で見たことがあったが、最後の斬り合いで、ドバッと血が出たこと以外、ほとんど印象に残っていない。

 

十幾年ぶりの映画館で、スクリーンの大きさ、音の大きさ、お茶やホップコーンを持っているのは許せるとして、箸を持って何か食べている人がチラホラ(七時上映のせいもあるのだろうが)。色んな匂いがただよっていて、驚くことが一杯だった。

 

最初にヨコハマタイヤのショートシネマ(7分、コマーシャル)があり、現代版の三十郎が出ていた。会議に出る前の上司と部下という設定で、ケータイが鳴り、「いますぐ、急には無理だ」とか言っている。会議では、iceGUARDタイヤのバルーンがどうの、カーボンがどうのとのプレゼンがあり、残りの説明を部下にまかせ、会議を途中で抜けるわけだが、何故か会議室にコートがあった。それからテレビでおなじみの画面になるわけだが、そこで白いコートを着ているわけだ。白いコートに紫ニットのタイ。おしゃれー。

 

「椿三十郎」が始まった。九人の若侍が集まっていて、ロウソクがボーボーと燃えている。実にボーボーと燃えていて、若侍たちののすき間からいつでも見える様になっている。あれはキッとファンヒーター仕掛けになっているに違いない。風が吹いてもロウは融けないのだ。

これはメッセージなのだ。昔見た「パリの屋根の下」で、パリの街を上空から撮っていて、ズームアップすると屋根の線が筆で描いてあって、「これはセットですよ」と言うのと同じだ。始まってすぐに終わってしまったような気になる。試写会だけに途中で抜けるわけにもいかず、アンケートを書くとお茶をくれると言うのと、最後の斬り合いを期待して待った。

ロウソクが点いているのに影が映らず異様に明るいのも、部屋の中で大刀を後生大事に持っているのも、城代家老の奥方が娘に「お父様は・・・」と呼ぶのも愛嬌だ。飛びっきりのもあった。敵役が三十郎をしばった「ロープ」を脇差で切るのだが、切った後に鞘に入らないのだ。少々あせって何とか納めたが、あれはきっと曲がったのだろう。期せずして出た御愛嬌だ。斬り合いでは、ドクドクと音だけがする。いよいよ最後は期待できそうだ。

やっと椿が流れてきて終わりに近づく。城代家老が助け出され目出度し目出度し。

季節が変わったように一面のススキの原。立ち合いだ。自分の顔の前に相手の顔がある。敵は羽織も着ている。せめて羽織くらい脱ぐだろうと思ったら、イキナリだ。あれは大東流に言う「柄取り」の技だろう。相手の刀の柄を取り合い、自分の柄は取られないようにともみ合いし、ちょっとしたつばぜり合いだ。お互いに相手の刀を抜き、斬る。血は出なかった。最近の世の中の事情を考えればそんな処か。ところが斬り合いのシーンを今度はスローモーションでやった。(おかげで柄取りの技がよく解った訳だが) 二回もいらないと思うが、そこだけは真面目に作ったという事か。最後のシーンは三十郎が若侍九人に見送られ、一人去って行く。思わず「シェーン・・・・・」と叫びたくなるではないか。

アンケートを書いて、玉露入りお茶 (椿三十郎 iceGUARDと書いてある)をもらい、帰り道で考えた。椿三十郎――黒澤明の憬れた男像――ガキ大将――キャラ。森田芳光はそれを言いたかったに違いない。漫画なのである。

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